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日本ノーリフト協会 代表 保田淳子さん インタビュー

Junko Yasuda Ms  

保田淳子さん プロフィール

日本で看護師を経験し、2003年3月より、南オーストラリア州アデレードフリンダース大学看護学部に留学。卒業後、同大学看護大学院ヘルスマネージメントを専攻。 

2009年、日本ノーリフト協会設立、2010年より一般社団法人日本ノーリフト協会代表理事に就任し、ノ-リフトの啓蒙活動を精力的に行っている。


聞き手: なぜ留学先としてオーストラリアを選択されたのでしょう?
保田さん:
 オーストラリアに留学したのは、2003年3月。その前にJAICA(国境なき医師団)に興味があり、まずは語学留学でオーストラリアかアメリカで悩みました。オーストラリアは旅行で何度か行ったことがあったので、行ったことのないアメリカを選びました。しかし、アメリカでは英語が話せないために差別的な扱いを受け、暮らしていけるか不安を覚えました。逆に、オーストラリア(ゴールドコースト、ケアンズ)で切符が買えなくて困っていたら、周りにいた人が、手取り足取り教えてくれたり、みんなフレンドリーで優しいし、英語が話せなくてもオーストラリアなら生きていけるかもと思ったのです。オーストラリアには良い思い出があり、「死ぬまでに住みたい」と思った唯一の国でした。他の英語圏の国々とも比較して最後はオーストラリアに留学を決めました。

聞き手: 留学を延長したきっかけは?
保田さん: 当初は10ヶ月の予定で、資金も10ヶ月分しか持っていかず、帰国する予定でしたが、結局、大学に入るまでの2年間、語学留学をしました。渡豪後4ヶ月目位から様々な施設にアプローチしていきました。スタッフの方々は、英語の喋れない私に施設を見せてくれて熱心に説明してくれました。そうしているうちにもっとオーストラリアの看護を見たいと思ったのです。その後、フリンダース大学の看護学部に編入、卒業後、大学院に進学しました。

聞き手: オーストラリアと日本の介護・看護業務の違い。
保田さん: 私が日本で働いていた時に感じていたことですが、日本では「プロとして100%、120%頑張ろう」と思ってしまいます。
それに対してオーストラリアは、「プロだからこそ、自分に出来ることと出来ないことをハッキリ認識しなさい」ということをよく言われました。出来ない事というのは、例えば法律で認められていないことは自分が出来ると思っても絶対してはいけない。専門職として患者さんに何かをリクエストされたとき、自信がなくても誰か助けてくれるから、そこをコーディネートするのがプロフェッショナルとして大事なんだ」「自分が一人で頑張るのは自己満足だ」「手を出し過ぎる」ということはよく言われましたね。それが一番大きな違いであると感じます。

聞き手:日本の介護施設・介護ワーカーが抱える問題点は何だと思いますか?
保田さん: 
ノーリフトの視点から言うと、身体疲労というのは長年の問題です。日本の製造業を見ると、腰痛や身体疲労などの問題は年々軽減されてきていて、メンタルヘルスや従業員のメタボ、個人の健康管理や予防にフォーカスが置かれるようになっているにも関わらず、介護や看護業界というのは未だに腰痛問題が解決せず、予防が対処療法どまりとなってしまっています。この差はなんなのかというと、やはり労働安全衛生マネジメントであると思います。 日本の製造業でうまくコントロールして腰痛や身体疲労が軽減されるようになってきたのは何かというと、労働安全衛生マネジメントや労災申請数を減らす、働く環境をどうするかという事の他にメンタルヘルスや男女均等雇用など、マネジメントがどういう視点でスタッフの環境を整えていくかだと思うんです。 オーストラリアは私が行っていた2003年の時点でそれがあったと思います。

聞き手:ノーリフト協会、今の活動状況、プラン
保田さん: これまではノーリフトの『普及』を行ってきました。普及をしていく中で、今後は『定着』していけるように、定着した後は『継続』できるようにと思っています。
今まではノーリフトという考え方や言葉を全国に知ってもらうために普及してきたのですが、定着は支部や各エリアで、支部ができるほどコアとなってくれる法人が出来てきているのでそこを中心としながら、その法人企業・団体がノーリフトを定着し、継続していける環境を作ることです。
日本では過去に、「リフトは導入したけれども倉庫に行きました」という風に継続ができなかった背景があります。そこの継続をしていけるようなサポートをしたいと思って今、現在、東京大学とE-learningを使ってサポートをしながら継続のことができればと思っています。
一つの法人からすると私達はノーリフトを普及しているように見えますが、実は法人が中心になりだすと今度は法人が地域に普及する、という役割が出てくる。地域で定着させて、地域で在宅でノーリフトをどう継続させるか、それが『渦』がどんどん大きくなって『普及・定着・継続』が日本全国に広がっていくことをイメージしています。

(聞き手:オーストラリア貿易投資促進庁スタッフ)