オーストラリアの花と植物
オーストラリアにはワイルド・フラワーを含めたとても多くの種類の花や植物があります。現在オーストラリアから日本への切花の輸入量は、日本における切花の総消費量の僅か1%未満ですが、ワイルド・フラワーについてはネイティブ品種の部門において毎年安定したシェアを保っており、特に出荷のピークとなる9月から10月にかけては、色鮮やかで珍しい花がたくさん入荷してきています。
日本に輸出される花や植物の品種は、現地にて観賞用に生産または採取されている品種のうちのごく一部。現地には今のところ国内用のみに生産されている品種もあり、実際には現在日本で流通しているより、はるかに多くの品種を輸出することが可能です。
当サイトでは、オーストラリアの切花や植物が日本に届けられるまでの各段階のストーリーと代表的な品種について、オーストラリア大使館・貿易投資促進庁の職員による現地の視察と、現地の協会等を通じて入手した情報をもとに、約10回程度に分けてご紹介いたします。
Vol1. 自然環境
花の農場、とりわけオーストラリアまたは南アフリカ原産のワイルド・フラワーを生産する農場の多くは、大都会から遠く離れた田舎にあります。農場は原生林に囲まれたところにありますが、生産者の多くは花の生産農場として所有している土地の一部を自然の森の状態のまま残しています。この森の中に生息する鳥や益虫は、害虫を駆除するうえで大変役に立っています。
■ 農場の向こうには高い木が茂っています。
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■ 遠くから見ると真っ暗に見える高木の林。近づいてみると木漏れ日が差し込んでいました。このような高木の周辺で自生している野生植物もあります。
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■ 高台にある農場からの眺め

■ 木々に囲まれた中にある、ピンクッションとワラターの生産農場
一方、バラやユリといった一般的な品種を生産する農場やナーセリーについては、その多くは労働者、市場、消費者、そして輸送手段などに比較的アクセスの良い、市街地の隅のほうにあります。
生産者の多くは持続可能性を意識した生産方法を採用しています。これは農場の土にもともと存在しない成分を混入することを極力避け、生物学的循環システムを最大限利用しようという考えです。原則、有機肥料や環境に影響の少ない殺虫剤を使っており、マルチも有機のものを使って雑草を下部に押し込み、水分を地下に蓄え、土の中に少しずつ有機成分を蓄積させています。
オーストラリアは希少性の高い、指定保護品種となっている花や植物を、国内外で取引することを厳しく規制しています。山林などで自生している野生植物の品種の一部、またはそれを原料とする製品の輸出は固く禁じられており、商業生産されたものの取引については、生産や販売のライセンス保有者を通じてのみ許可されています。グラスツリー (Xanthorrhorea) はCITESに指定されている良く知られた品種の一つです。

■ 森林の中で自生している下草、シダ類
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■ 厳格な保護体制下にあるグラス・ツリーが大自然の中で自生している様子
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人々が国立公園となっている山林から野生の植物を採取することも禁止されていますが、これは花を全ての人と生き物(人は勿論、野生の鳥や虫など食料として頼っている生き物たちも含めて)のために自然の状態で保っておくためです。野生植物の管理方法としては、生産が可能な品種については商業生産を行なわせ、生産することが難しい一部の品種については厳格な管理体制の下、山林などからの直接採取を認可するという体制をとっています。

■ 農場の近くには国立公園、見晴らしの良い場所があることが多い

■ 農場のそばにウォンバットが作った巣穴
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■ タスマニアの芍薬の農場に流れている小川。
カモノハシが自生しているそう。 |
■ 農場近くの道路で乗馬グループが通行していました。

■ カンガルーは森林とワイルド・フラワーの農場付近を自由に行き来できます。