オーストラリアの花と植物
オーストラリアにはワイルド・フラワーを含めたとても多くの種類の花や植物があります。現在オーストラリアから日本への切花の輸入量は、日本における切花の総消費量の僅か1%未満ですが、ワイルド・フラワーについてはネイティブ品種の部門において毎年安定したシェアを保っており、特に出荷のピークとなる9月から10月にかけては、色鮮やかで珍しい花がたくさん入荷してきています。
日本に輸出される花や植物の品種は、現地にて観賞用に生産または採取されている品種のうちのごく一部。現地には今のところ国内用のみに生産されている品種もあり、実際には現在日本で流通しているより、はるかに多くの品種を輸出することが可能です。
当サイトでは、オーストラリアの切花や植物が日本に届けられるまでの各段階のストーリーと代表的な品種について、オーストラリア大使館・貿易投資促進庁の職員による現地の視察と、現地の協会等を通じて入手した情報をもとに、約10回程度に分けてご紹介いたします。
Vol 3. ワイルド・フラワーの主な種類

ワイルド・フラワーは南アフリカ、及びオーストラリア固有のユニークな花の総称です。野生植物で、オーストラリアの大地や森林(ブッシュ)のあらゆるところに自生していますが、その特徴ある花やグリーンの魅力に観葉植物としての価値が認められて以来、現地では長い年月をかけて色や形の良いものを選別し、交配により新品種も作り出してきました。生産や収穫後処理の技術も日々向上し、今日ではワイルド・フラワーは商業ベースで生産され、輸出にも対応出来る商品となっています。
今回はオーストラリアで生産されているワイルド・フラワーの代表的な品種とそれぞれの開花時期、おおよその日持ち日数などについてご紹介いたします。
<< ワトル >>
ミモザとも呼ばれています。開花時期は品種により異なります。日持ちが7日を超える種類もありますが、多くは3-6日程度のため、切花としての輸出はあまり行なわれてません。葉物として輸出されているものもあります。ゴールデン・ワトルはオーストラリアの国花です。
<< バンクシア >>
様々な種類の花がありますが、バンクシアの円筒状の形をした花の頭部には何百という小さな花のつぼみが密集しています。生産者はこれらの開花の度合いで収穫時期を見極めます。下のほうの一部分のみが開花している状態をキャンドル・ステージと呼びますが、この段階で収穫されることもあります。輸出されるバンクシアの品種の多くは茎の先端に茎と同方向にまっすぐ伸びるように花がつくので、効率よく箱詰めできます。
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全体が開花すると大きなブラシのような形になります |
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花のシーズンが終わると木のような硬い種のさやが形成されます。このさやの部分もフラワーアレンジメントに使われます |
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気温が高く、乾燥している時、または山火事が発生した際に種がさや部分より弾け飛ぶように離脱し、さや部分は穴が開いたような形で残ります |
■ 種のさや部分はお土産品に加工されることもあります。写真は内部をくり貫いてポプリを入れたものと、薄くスライスして作ったコースター |
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■ バンクシア・プラジオカルパ。シルバー・スピアとも呼ばれていて、日本でも人気。日持ちは3週間ほど |
■ フッカーズ・バンクシア
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■ メンジーズ・バンクシア
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下のほうから開花してきている様子。上部はまだつぼみの状態
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■ ほかにも様々な色、形のものがあります。茎部分が短く、地面に近いところで花が咲き、さやを形成するものもあります。(写真:中央段の一番右) 開花時期は品種により様々で、日持ちは比較的長く、どの品種も10-14日程度あります
<< ユーカリ >>

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■ つぼみの状態。
上部にキャップのようなものがついています
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■ 開花したところ
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■ ユニークな形をしたユーカリの実
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何百種類もの品種があると言われてますが、切花として流通しているのはほんの一部です。花が咲く品種の特徴としては、つぼみが形成され、膨らんでくると、つぼみの上部にあるキャップのような部分が自然にとれて、中から色鮮やかで細くてデリケートな花びらが出てきます。大きくてカラフルな花をつけるものもありますが、多くは日持ちがしないため輸出はされていません。花が散った後はユニークな形の実が形成されます。実から種が抜けお落ちると穴が開いたような形のさや部分が残ります。このさや部分はお土産品に加工されたり、このまま、またはカラースプレーなどで着色された後、フラワーアレンジメントに使われています。
■ ブルーグリーンの葉に鮮やかな色の花をつけているユーカリ
<< グレビリア >>
花の形が蜘蛛のように見えることからスパイダー・フラワーと呼ばれるものもありますが、瓶を洗うブラシや歯ブラシのような形をしたものなど、様々な形や色のものがあります。多くの品種は日持ちが3-7日程度で、輸送中にダメージを受けやすいため、あまり輸出はされていません。開花時期は種類により異なりますが、多くは11から5月です。葉物として栽培、出荷されているものもあります。
<< ガイミア・リリー >>
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茎の長さが3から4メートルほどになる大きな花で、開花時期は6から9月頃。保護品種のため、生産、収穫、出荷にはライセンスが必要で、年間出荷できる本数は限られています。輸出用は2メートル程の長さにカットして特大サイズの箱に入れて出荷されています。日本にも毎年限定的な数量ですが輸入されています。日持ちは3~4週間程度。葉の部分も1メートル以上はあり、大きなアレンジメントを作るのによく使われています
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■ 花の頭の部分はユリのような形をした小花が密集しています。小花全部が開花すると、その直径は大人の腕で抱えて一杯になるほど
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■ 大きく張り出しているのがガイミア・リリーの葉で、右端に柱のように立てて使われているのは乾燥させた茎の部分です。乾燥させた茎は軽くて丈夫でねじや釘を入れやすいので、このように使われることもあります
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■ 大きなアレンジメントの後ろ側にガイミア・リリーの葉を入れて、高さを出しています |

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■ 現地の雑貨店に飾られていたガイミア・リリー。茎の部分を短く切って花瓶に入ってました
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<< プロテア >>
ピンクと白のキング・プロテア。外側の大きな葉包部分から内部の小花へと順に開いていきます。小花の奥の部分には蜜が貯められています。開花時期は9-12月ごろ、日持ちは2週間程度。日本にも定番品として輸入されています。
■ つぼみ(左)、包葉部分が少しづつ開いていく様子
■ 小花が完全に開いた様子
■ プロテア・ピンクアイス。キング・プロテアと同様、外側の包葉部分から内側の小花へと順に開いていきます。右はほぼ全ての小花が開花した様子。キング・プロテアほど大きくは開きません
■ 他にも様々な色、形のものがあります。プロテア・グランディカラー (中央) は年2回 (3-5月と 8-11月ごろ)開花しますが、日持ちは10日程度とやや短め
<< ピンクッション >>
開花したときの形が針山のように見えることでそう呼ばれています。切花としても、鉢物としても多品種が流通しています。針のように見える部分の1つ1つが小花です。色は主にオレンジ~赤系か黄色系。開花時期は8-12月ごろで日持ちは2週間ほど。

■ 小花の先端部分が開花すると下を向くリューコスペルマム・リフレクサム(左)
■ 小花部分が常に上を向いているもの (中央、右) は定番品
<< セルリア >>
ウェディング・ブーケによく使われます。開花時期は5から10月で、日持ちは2週間程度。
ブラッシング・ブライドと呼ばれている白系のもの(左) と、シュガー・アンド・スパイスと呼ばれているピンク系のもの(右) などがあります。
<< ワラター >>
NSW州の花で、赤と白は日本にも定期的に輸入されています。現地では新種の開発も進んでいて、ピンクや黄色、中間色のもの、様々な形のものが発表されています。


<< ワックス・フラワー >>


白やピンク、紫系のものが代表的ですが、複数の花びらが重なり合って咲くダンシング・クイーン(下段・右)、赤、ピンク、白の花が混じった、マイ・スィート・シックスティーン(下段・左)など様々な色、形の品種があります。開花時期は9-11月ごろ、日持ちは品種により異なりますが10日前後です。
<< リューカデンドロン >>
様々な色形のものがあります。先端部には丸い実が形成され、それをチューリップのような形をした包葉が包んでいます。品種、栽培地により開花時期は異なりますが、ほぼ年間を通じて供給されており、日持ちも品種により1から3週間程度。

<< カンガルー・ポー >>

赤や黄色は代表的ですが、複数色が出るものも含め、他にも様々な色、形のものがあります。赤と緑の2色が出るカンガルーポー(Anigozanthos manglesii)は西オーストラリアの州の花です(下段・中央)。
右のライラック・クイーンのような珍しい色のものも品種開発により作られています。
<< その他の品種 >>
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クリスマス・ブッシュ
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バッコージア・ムーンライト・クリーム
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このほかにも、オーストラリアのワイルド・フラワー協会 (Wild Flowers Australia) のWebsiteには代表的な品種の情報をまとめたPDFが掲載されています。 ダウンロードはこちら
また協会から「Flowers from Australia」という冊子を購入することも出来ます。
