利用歴 |
ムントリーは、ビクトリア州および南オーストラリア州のアボリジニにとって非常に貴重な果実である。余った果実は集めて乾燥させるか、ケーキに焼き込んで冬に備えた。これらの果実は、ナリンジェリ族の人々の食事の中心を占めていた。彼らはムントリーで作ったフルーツレザーを他の部族との交易に用い、ビクトリア州西部の火山灰地で作られた玄武岩の斧頭のような貴重な道具と交換していた。ムントリーは大量に入手できたので、温帯地域に住むアボリジニの部族にとっては非常に大きな社会的・経済的意義を持っていた(Clarke, 1998; Clarke, 2003; Harte, 2006; National Museum Canberra; Low, 1989)。ムントリーはまた初期の入植者にとっても有難い食料源で、ケーキやジャム、チャツネに用いられた。
「ムントリー」という名前は1840年に初めて記録されており、入植者が南オーストラリア州東部のカウルナ語およびナリンジェリ語からオーストラリア英語に採り入れたアボリジニの言葉400語の内の一つである(Smith, 2004; Blair et al, 2001, Moore)。
ムントリーは1800年代後半にイギリスに栽培が伝わり、シリー諸島で生育に成功している(Chittendon, 1951)。
ムントリーはオーストラリアの伝統食品とされており、コーデックス規格のリストに記載されている。
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機能性 |
ムントリーは、フォーリンチオカルト法で総フェノール成分の含有量が非常に多いことが示されており(67.12 +/- 4.62 µmol GAE/g FW)、ブルーベリーの2.5倍となっている。Trolox等量抗酸化能(TEAC)法を用いてムントリーの抗酸化能を調べた結果は、123.82 +/- 10. 8 TEAC µmol TE/g FWであり、光化学ルミネセンス(PCL)分析により測定した抗酸化能は49.34 +/- 4.29 PCL µmol TE/g FWである。
出典:Netxel, M., Netzel, G., Tian, Q., Schartz,S., Kanczak, I., (2007) Native Australian fruits- a novel source of antioxidants for food(オーストラリア原産の果実-新しい食用抗酸化物質源), Innovative Food Science and Emerging Technologies, 8(3) pp. 339-346
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生育情報 |
ムントリーは、中程度~強いアルカリ性(PH6.0~8.0)の水はけの良い土壌で最もよく育つ。野生の個体群は自然降雨が500~800ミリの地域で育つ。
耐寒性で、乾燥期および高温に強いが、栽培には十分な水が必要である。一方、開花や着果と相対する栄養成長に拍車がかかる春先には特に、水のやり過ぎに注意が必要である。極度に乾燥した土壌は、水分を多く含んだ土壌と同様に避けた方が良い。ムントリーは直立型のほふく性植物であるので、商業生産用の栽培には格子垣に這わせると管理がしやすい。収穫も容易であるし、果樹園の効率も大幅に向上する。
出典:Hele, A., (2001) Muntries production Fact Sheet(ムントリー生産の概況報告書). Primary Industries and Resources South Australia.
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